自宅の庭で人身事故…私有地でも免許停止になる?ならない?

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自宅の庭で人身事故…私有地でも免許停止になる?ならない?

〜自宅の庭・敷地内の事故と運転免許。「道路外致死傷」という例外規定を、保険のプロがわかりやすく解説〜

こんにちは。大淀支店の土屋です。

突然ですが、クイズです。

Q. 門と塀で囲まれた自宅の庭(完全な私有地)で車で他人をひいてしまった。この場合、免許の点数や免停などの行政処分の対象になる。〇か×か?

答えは——実は「〇」。処分の対象になり得ます。

「私有地なのに?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

実は、道路性のない私有地での事故は、原則として行政処分の対象外です。このこと自体、あまり知られていません。しかしこの原則には重要な例外があり、人にケガをさせてしまった場合(人身事故)だけは、私有地であっても免許停止・取消しの対象になり得るのです。

今回は、

① 原則のしくみ

② 例外となる人身事故のルール

③罰金や反則金はどうなるのか

④ 自動車保険はどうなるのか

の4つの視点から順番に解説します。


まず大前提:道路交通法が適用されるのは「道路」だけ

 

スピード違反、一時不停止、信号無視……。こうした交通違反で点数が付いたり反則金を納めたりするのは、すべて道路交通法にもとづく仕組みです。

そして道路交通法は、その名の通り「『道路』における交通に適用される法律」です。つまり、道路ではない場所での運転には、原則としてこの法律の規制が及びません。

注意:私有地でも「道路扱い」される場所がある

ここで気をつけたいのが、法律上の「道路」は公道だけではないという点です。道路交通法では、「一般交通の用に供するその他の場所」も道路に含まれます(道路交通法2条1項1号)。

たとえば、

  • スーパーやコンビニの駐車場
  • 誰でも通り抜けできる私道

のように、私有地であっても、不特定の人や車が自由に出入り・通行している場所は、法律上「道路」として扱われることがあります。このように道路と同じ扱いを受ける性質のことを「道路性がある」といい、道路性のある場所での事故や違反は、公道とほぼ同じように処理されます。

一方、門や塀で囲まれた自宅の庭や、関係者しか入れない工場の敷地のように、限られた人しか出入りしない場所は「道路」には当たらない(=道路性がない)とされます。

原則:道路性のない私有地の事故は、行政処分の対象外

道路性のない私有地では、道路交通法上の「違反」がそもそも成立しません。そのため、

  • 違反点数は付かない
  • 反則金もない
  • 物損事故であれば、免許に関する行政処分もない

というのが原則です。自宅の庭で塀や自分の車を擦ってしまった、というようなケースで免許の心配をする必要は基本的にありません。

「私有地なら処分の対象外」——ここまでは、その理解で正しいのです。


例外:「治療期間15日以上」の人身事故だけは別枠

 

ところが、人身事故だけは話が変わります。

道路交通法103条には、「道路外致死傷(どうろがいちししょう)」という規定があります。ざっくり言うと、

道路以外の場所であっても、自動車の運転で人を死傷させてしまった場合、公安委員会は運転免許の取消しや停止(最長6か月)ができる

という制度です。点数制度とはまったく別枠の、いわば「例外ルート」の処分です。

なぜ例外があるのか。理由はシンプルで、「人にケガをさせるような運転をした」という事実は、場所が庭でも駐車場でも変わらないからです。刑事上も、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法)は道路上に限らず成立します。「この人にこのまま道路で運転を続けてもらって大丈夫か?」という安全確保の観点から、道路外の人身事故にだけは処分の仕組みが残されているのです。

こんなケースを想像してみてください(※事例はフィクションです)

 

Aさんの自宅の庭に、その日は外壁の塗替えのため、塗装の職人さんが来ていました。Aさんが敷地内で車を移動させようとしたところ、車の死角にいた職人さんに気づかず接触。職人さんは骨折し、治療に数か月かかる大ケガになってしまいました。

Aさんは「完全な私有地だから、賠償はきちんとするが、免許への処分はないはず」と考えていました。ところが数か月後、県の公安委員会から免許停止処分に関する通知が届きます。——これがまさに、道路外致死傷による処分です。

処分の目安

各都道府県の公安委員会が公表している基準では、おおむね治療期間15日以上の人身事故から処分の対象となり、被害の程度に応じて次のような量定とされています。

被害の程度 もっぱら運転者の不注意による場合 それ以外の場合
死亡・重い後遺障害など 免許取消し 免許取消し〜長期停止
治療期間3か月以上または後遺障害あり 取消し(欠格1年) 停止60日以上
治療期間30日以上3か月未満 停止60日以上 停止30日以上
治療期間15日以上30日未満 停止30日以上 停止30日以上

※基準の詳細は都道府県により表記が異なります。個別の事案は必ず通知書・公安委員会の案内をご確認ください。

点数制度による処分との違い

この「道路外致死傷」による処分には、通常の免停とは異なる特徴があります。

・ 違反点数には加算されない(累積点数とは別枠)

・ 処分を受けても「前歴」にはならない

・ 処分前に弁明や意見を述べる機会が与えられる(事故の状況や事情を伝えることができます)

・ 停止処分の場合、停止処分者講習を受講すると停止期間が短縮される制度があります

 


お金の話:反則金は発生しない。でも「罰金」は別の話

ここも誤解の多いポイントです。「反則金」と「罰金」は、名前は似ていてもまったく別のお金です。

反則金は発生しません

反則金は「交通反則通告制度」(いわゆる青切符)にもとづく行政上の納付金で、道路上での比較的軽微な交通違反だけが対象です。道路性のない私有地では道路交通法違反がそもそも成立しないため、反則金が発生する余地はありません。また、仮に道路上であっても人身事故は青切符で処理される類型ではないので、いずれにせよこのケースで反則金を納めることはありません。

罰金は発生する場合があります

一方、罰金は刑事罰です。私有地の人身事故でも過失運転致傷罪(自動車運転死傷処罰法)は成立し得るため、警察から検察庁へ送致され、検察官の判断によっては略式命令などで罰金が科されることがあります。これは免許停止などの行政処分とは完全に別ルートで進む手続きです。

罰金額は事案により異なりますが、過失運転致傷罪の法定刑は100万円以下の罰金(または懲役・禁錮)で、実務上の目安としてはケガの程度や過失の内容に応じておおむね20万〜50万円程度とされることが多いようです。もっとも、被害者との示談が成立している、ケガが比較的軽い、誠実に対応している、といった事情がある場合には、起訴猶予(不起訴)となり刑事罰を受けずに終わるケースも少なくありません

つまり整理すると——「点数なし・反則金なし。ただし免許の処分(行政)と罰金(刑事)は、それぞれ別の手続きとしてあり得る」。これが私有地の人身事故の全体像です。


保険の視点:私有地の事故、自動車保険は使えるの?

 

ここが保険代理店として一番お伝えしたいところです。

結論:私有地の事故でも、自動車保険は基本的に使えます。

  • 自賠責保険は「自動車の運行によって」他人を死傷させた場合が対象で、道路上の事故に限定されていません。私有地の人身事故でも対象になり得ます。
  • 任意保険の対人賠償・対物賠償も、一般的に事故の場所を問わず補償の対象です。示談交渉サービスも利用できます。
  • ご自身や同乗者のケガには人身傷害保険、車の損害には車両保険が、契約内容に応じて対応します。

ただし、注意点もあります。

  1. 警察への届出は必ずしましょう。 道路性のない私有地の事故は法律上の報告義務の対象外とされるケースもありますが、事故の記録が残らないと、保険金請求や賠償の話し合いで困ることがあります。「私有地だから」と自己判断せず、まず警察への連絡を。
  2. 相手が仕事中の場合は労災保険との調整が生じることがあり、手続きがやや複雑になります。
  3. 補償の可否や範囲はご契約内容・約款・個別の事故状況によって異なります。「うちの契約はどうなっている?」と思ったら、遠慮なく代理店にご確認ください。

 


まとめ:原則と例外を正しく知ることが、いちばんの備え

 

・ 道路性のない私有地の事故は、原則として点数も反則金も行政処分もない

・ ただし私有地でも、駐車場など誰でも通れる場所は「道路」扱いになることがある

・ そして治療期間15日以上の人身事故だけは例外。「道路外致死傷」として免許停止・取消しの対象になり得る

・ 自動車保険は私有地の事故でも基本的に使える。 ただし契約内容の確認と、警察への届出が大切

自宅の駐車場や庭での「ちょっとした車の移動」は、毎日のように発生します。そして敷地内は、家族・来客・作業に来た方など、車の動きを予測していない人がすぐそばにいる場所でもあります。乗り込む前のひと回り確認(車の周囲の目視)を、ぜひ習慣にしてください。

弊社では、保険はもちろん、保険以外のお金のことでもお客さまをサポートし、万全の安心をお届けいたします!


本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事故・処分・契約に関する判断を示すものではありません。行政処分や法的責任についての具体的なご相談は弁護士等の専門家へ、保険のお手続き・補償内容については担当代理店、もしくは引受保険会社へお問い合わせください。

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