奈良県の陽子線治療センター行ってきました!
大淀支店の土屋です。先日、保険代理業協会の仲間と一緒に、奈良県天理市にある「高清会 陽子線治療センター」に見学に行ってきました。1月に行った岐阜県の中部国際医療センターは車で3時間弱かかりましたが、こちらは約2時間で行けました。
陽子線治療は体への負担の少ない治療法
先ずは座学で、陽子線治療について教えていただきました。
体内のがんを手術せずに治療する方法が放射線治療です。一般的な放射線治療では「X線」という放射線を使用しますが、陽子線治療では、水素の原子核である陽子を加速させ、エネルギーを高めた「陽子線」を照射します。陽子線も放射線の一種ですが、X線とは異なり、エネルギーのピークをがん組織に的確に合わせることができます。そのため、がん以外の正常な細胞へのダメージを抑えつつ、がん組織を集中的に攻撃することが可能です。
加速装置で陽子を光速の70%まで加速
次に、陽子線治療の施設を見せていただきました。中部国際医療センターで見学させていただいた際も見せていただきましたが、その時よりも更に間近で見せていただきました。
↓は陽子線を加速するための加速装置です。この装置で陽子を加速させ、最終的に光速の70%(1秒で地球を5+1/4周回する速度)まで加速させて、がんの患部に照射します。画像中央辺りの機械については「ここは(放射線の)線量が高いので近づかないで下さい」と言われて、少し緊張いたしました。
因みに、この装置がある地下のフロアに降りるエレベーターは、一般の方が入ってこれないようにパスワードを入力しないと降りれない仕様になっておりました。
治療期間は週5回で2週間から最長2ヶ月
↓が陽子線治療装置になります。画像の真ん中の台の上に横になって、陽子線を罹患部に照射します。がんの種類や部位、進行具合により異なりますが、基本週5回の治療を最低2週間から最長2ヶ月受けるとのことです。因みに、一回の治療にかかる時間は短い場合で約20分。肺などよく動く部位の治療の場合は、40〜60分かかる場合もあるとのことです。
固定具を使って患者さんの体を固定
2週間〜2ヶ月かけて合計で約10〜40回、同じ患部に陽子線を照射します。そのため、毎回正確に同じ場所に陽子線を当てる必要があり、体を動かないように固定するための「固定具」を使用します。固定具は、患者さん一人ひとりに合わせてぴったりとフィットするように調整されます。
↓は頭頸部に照射する際に使用する固定具です。
めっちゃ回転します!
今回は病院側のご厚意で、陽子線治療装置を実際に動かすところも見せていただきました。↓がその動画です。
↓が装置の裏側です。小型の観覧車くらいの大きな円盤が回転しており、生で見ると大迫力でした。何故か回転してるときのBGMは「オー・シャンゼリゼ」でした。
陽子線治療にも得手不得手がある
会議室での説明以外でも、施設見学の際にも担当の方がとても丁寧に説明していただき、こちらの質問にも気さくに答えていただきました。今回の見学で改めて勉強になった点としましては、
・陽子線治療には適するがんと適さないがんがある。白血病のような血液のがんや、全身に広がった転移性のがんには効果が低い。
・肝臓のように大きく動きにくい部位や、前立腺などには効果を発揮しやすい。
・小児がんに対しても効果的。X線治療では成長障害などの後遺症が残りやすいのに対し、陽子線治療ではそのリスクが低くなる。
・陽子線治療でも後遺症が完全になくなるわけではない。
・がんの種類や部位によっては、X線治療や手術だけで十分な治療効果が得られる場合もある。
最終的には総合的な医療判断が大切
また、最近の医療の傾向として、以前に増してインフォームドコンセント(患者さんに対する十分な説明と同意)が重視されるとのことです。最近は患者さん自身がネットで情報を調べて「この治療法の方がよいのでは?」と聞かれることも増えてきたので、病院としてもセカンドオピニオンを推奨し、各治療法の効果やリスクを提示した上で、患者さん自身に選択してもらうことが多いとのことです。
そのため、治療を受ける際に患者さんが書く同意書(治療のリスクと副作用などに関する契約書)についても、昔は一枚で済んでいたのが、最近は6〜7枚になることも珍しくないとのことです。
また、医師は自身の専門分野においてはプロフェッショナルですが、他の分野や専門外の治療については詳しくない場合もあります。そのため、複数の医師の意見を聞いて判断した方がいいとのことでした。その点では、それそれの診療科が連携した総合病院で治療を受けるのが、最適な治療法を見つけるために重要と言えるでしょう。
弊社では、これからも医療に関する最新情報も積極的に学び、皆様のお役に立つ情報を提供してまいります!